VWの工場閉鎖はかなり「ヤバい」レベルです
フォルクスワーゲンといえば、ドイツの国民的な企業です。
同社は、ヒトラーの「国民車構想」から国有会社として誕生し、ナチスドイツ崩壊後も民間企業として成長し続け、今やトヨタと世界自動車販売台数のトップを競うほどのビッグ企業に成長しました。
そのフォルクスワーゲンが、ドイツ国内にある主要工場の閉鎖を発表したことは、以前このブログでも取り上げました。
フォルクスワーゲンは、国内に6つの大きな車両工場を持っていますが、私は今までフォルクスワーゲンはドイツ国内の工場を閉鎖したことはないし、世界1、2を争う規模の会社ですから、工場を閉鎖するにしても、せいぜい1工場だろうなんて勝手に思っていました。
ところが、10月28日のブルンバーグの記事によると、今フォルクスワーゲンの経営陣は、ドイツ国内6工場の半分である3工場の閉鎖を検討しているとのことなのです。
加えて、全従業員の10%の給与カット、残る工場の全ての縮小も計画しているとのことです。減給の対象者は14万人にも上ります。
フォルクスワーゲンの労働組合はかなり強力とのことですので、同社経営陣の計画が全て叶えられるかどうかは別として、大変なリストラを経営陣は考えています。
フォルクスワーゲンの労働組合は先月28日、早々に集会を開いたために、同社工場の一部の生産がストップしています。
12月1日から、本格的なストライキも計画されているようです。
自動車車両工場が閉鎖されるということは、ただ単にその工場で働く人が職を失うだけではなく、自動車の多くの部品を供給している会社にも影響が及びます。
工場で働く人が3万人ほど職を失うと、その4~5倍の労働者に影響が及ぶでしょう。
フォルクスワーゲンの経営陣は、ヨーロッパ経済の不振で自動車が思うように売れていないことに加えて、EV車シフトを進めていたがEV車では中国車に価格面で全く敵わないこと、電気代等が急騰したことによるコスト上昇が想像以上であることを工場閉鎖の理由にしています。
元々フォルクスワーゲンを含む欧州の自動車メーカーは、世界で売れ続けるハイブリット日本車に対抗するために「ディーゼル車」を進めていた時期がありました。2005年~頃のことです。
しかし、排ガス規制を上手くクリアできないため、フォルクスワーゲンは、2015年に不正に検査をクリアしていたのが発覚してしまい、世界的な大問題になってしまいました。
その後、SDGsだの、脱炭素などが叫ばれて、環境問題の世界の情報発信の拠点であった欧州は、「EV車」の開発に取り組みました。
加えて環境問題から、ドイツでは「脱原発」も進んだわけです。
欧州経済が不振で自動車全体が中々売れないことに加え、EV車は価格面で中国車にはとても敵わないし、原発止めた上にロシアからのエネルギー供給も大幅に制限されてしまいエネルギーコストが急上昇してしまいました。
これではドイツで自動車を製造しても、在庫が膨れるだけで、売上増には繋がらない。
これがフォルクスワーゲンの経営陣が、母国ドイツで大幅な工場閉鎖によるリストラを検討している理由です。
さらに言えば、フォルクスワーゲンは、中国にどっぷり依存していましたが、その中国は不動産バブルの本格的な崩壊と経済の崩壊の真っ只中です。
フォルクスワーゲンには、今のところ全く明るいネタはないし、なんだかお先真っ暗な話しばかりなんですが、そんな中で、アメリカだけは一応「経済絶好調!」とまではいかなくても「経済やっぱりかなり強い!」と言われています。
しかし、中国は既にボロボロ、ドイツもフォルクスワーゲンはじめ製造業の会社がかなり厳しい状況なのです。
「世界でアメリカだけ経済が強い!なんてそんなわけないだろ!」
今週はアメリカ大統領選挙が行われます。
大統領選挙後、脚色していた経済指標のウソがばれて「まさか」と思うような状況になるのではないかと、私は思います。