FRBの利下げに反するアメリカ長期金利

アメリカの中央銀行であるFRBは、今月18日に政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を0.25%引き下げることを発表しました。

FRBは、インフレを抑えるためにFF金利を5.5%まで引き上げましたが、インフレが落ち着きだしたということで、今年は今回の引き下げを含めて計2回の引き下げを実行し、4.75%としたのです。

FRBが金利を下げるということは、インフレが落ち着き始めたこともありますが、アメリカの景気がやや下落方向に向かっていることも意識しています。

FRBのパウエル議長は、今回の引き下げを発表した後、今後の利下げについては、今まで以上に慎重に見極めるという主旨の発言をしました。

このパウエル議長の発言(慎重に見極める)によって、アメリカの長期金利(10年国債の利回り)が上昇し始めたのです。

FRBが政策金利である短期金利を引き下げますと、同時に長期金利も下がることが多いのですが、今回はその真逆に長期金利が反応しました。

この長期金利の思わぬ上昇によって、同日のニューヨークダウ平均は1000ドル以上下落したのです。

「アメリカではなぜ中央銀行が短期金利を引き下げたのに長期金利が上昇したのか?」

ここで来年1月20日からアメリカ大統領に就任するトランプさんの政策を「物価」という観点から考えてみましょう。

①    法人・個人問わず減税を実行する→減税分手取りが増加しますから購買力が向上して物価上昇要因になりますね

②    国内の減税分を輸入関税で補う→関税が増える分、アメリカ国内への輸入コストが上昇しますから物価上昇要因になります

③    不法移民を強制帰国させる→これ日本では当たり前のことなんですが、アメリカでは農業や建設現場で働く人の多くは不法移民と言われています。そうした人たちが居なくなるということは、人件費が向上することになりますから物価上昇要因になります

こうして考えますとトランプ新大統領の公約は、物価上昇要因につながるものが多いですね。

トランプ新大統領は、こうした物価上昇要因を、自国の原油生産を増加させることによって抑制しようと考えています。

自国原油増産もトランプ大統領の公約の一つです。

しかし、そのアメリカの原油増産なのですが、一つ大きな問題を抱えています。

大産油国であるロシアやイランが経済制裁を受ける中でも、世界的な景気減速によって原油価格が下落しているのです。

現在原油価格は1バーレル当たり70ドルを割り込んだところでじわじわと下落傾向にあります。

アメリカの原油生産は、地下にある原油を含んだ石を水圧で砕いて、その石を押し潰して搾り取るという方法(シェールオイルと呼ばれています)で採油しますから、穴を掘れば地上に吹き上がるという油田採掘よりも採油コストが高くなります。

アメリカの原油生産の損益分岐価格は、1バーレル40~60ドルと言われていますが、原油価格が70ドルを割り込んでしまうと中々新規の原油生産には繋がりにくくなってしまいます。

原油価格は一昨年の半ばに1バーレル120ドル超という高値をつけた後、昨年の秋に多少上昇局面がありましたが、基本だらだらと下落傾向を続けています。

こう考えますと、FRBも今後の利下げは早々に決定するわけにはいかず、「よーく物価の状況を見極めたい」ということになってしまいます。

しかし、世界で経済規模第2位の中国は不動産バブルに加えて、モノが売れず経済下落の真っ只中ですし、ドイツもフォルクスワーゲンやボッシュといった代表的製造企業がドイツ国内の工場閉鎖とか大リストラを発表しています。

どうも世界全体を見ていますと、インフレを怖がるよりも、デフレの進展を心配すべきなんじゃないのかな?と思える状況なのです。

今年もあとわずかです。

来年2025年はどんな経済になるのでしょうね?

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