VWドイツ国内工場閉鎖か?
POINT
フォルクスワーゲンといえば、そもそもヒトラーによるナチス政権が、ドイツ国民車を生産する目的で設立した国営企業が発端の会社です。
今では、世界最大の自動車会社は「トヨタかVWか」と言われるほどの自動車会社に成長しています。
そんなVWが、そもそもの誕生の地であるドイツ国内のいくつかの工場を閉鎖する計画があることを今月3日アメリカのCNNが報じています。
CNNの記事によると、VWの87年に及ぶ歴史の中で、ドイツ国内の工場閉鎖が現実となると初めての事になるとのことです。
VWは世界中で約68万3千人の従業員を雇用していますが、ドイツ国内の従業員は約29万5千人です。
約半分がドイツ人ということです。
POINT2
VWがドイツ国内の複数工場の閉鎖を実行すれば、ドイツ国内で多くのVWで働く社員が雇用を失うことになります。
それどころか、自動車工場というのは、部品会社等多くの関連する製造会社が周辺に存在して成立しているものです。
当然ですが、一つの自動車工場が閉鎖となると、それらの製造会社も存続は厳しくなります。
これはドイツによっては大問題です。
VWと言えば、過去中国への進出は大変積極的でした。
もう10年ほど前、私はよく中国成都市を訪問していましたが、成都のタクシーのほとんどがVWでした。
日本車も人気で、成都市の町中でよく日本車も見かけましたが、VW車の多さには全くかなわなかったことを記憶しています。
当時の中国経済の目覚ましい発展にVWは上手く乗っていたわけです。
POINT3
しかし、今では中国経済は全く振るわず、VWの今年の中国での販売納車台数は前年同期比7パーセント減と大きく落ち込んでいます。
その一方で、中国は国策としてEV車の生産に取り組み、EV車の販売先としてヨーロッパも大きなターゲットになっています。
まぁ中国製のEV車なんて、いつバッテリーが爆発するかわからないし、それ以外の故障も多いのは確かでしょうから、今後ヨーロッパでもどれだけ売れるかはわかりませんが、VWのヨーロッパでのシェアも幾らかは失うことは確かでしょう。
だからヨーロッパの自動車業界は極めて厳しい状態に立たされているわけです。
それでは、VWは本当にドイツ国内の工場の幾つかを本当に閉鎖できるのか?
これはこれで中々難しい問題です。
VWの監査役会のほぼ半数はVWの労働組合の代表が占めており、彼らが国内工場の閉鎖には強硬に反対することは目に見えています。
そう簡単ではありません。
それでもなお、VWがヨーロッパ市場を担うドイツ国内工場の閉鎖を計画するのか?
それはヨーロッパ経済があまりに悪いということなのでしょう。
加えてドイツ国内で製造する際のコスト上昇もあると思います。

中国製のEV車なんて「安物買いの銭失い!」になることは目に見えています。
日本では中国製どころか、まだましな韓国製の自動車でも日本進出しても全然売れずに撤退するのですから、今、中国の国内経済が悪すぎて、中国国内では売れないEV車をヨーロッパで販売しても、ちょっと長い目で見れば大したことではないとVWも思うはずです。
しかし、ヨーロッパ経済が思いのほか悪く、かつロシアから低価格の石油や天然ガスが輸入できず、コスト上昇が顕著となれば、これはVWの経営に大きく影響するということになってしまいます。
どうもヨーロッパも含めて世界経済は厳しい方向に向かっているようです。